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2007年 06月 05日
悪夢系。
それは私のとても好きなジャンルなのだが。 「サスペリア」はその原点だ。 改めて見て、この映画の悪夢系ぶりにおどろいた。 つじつまとか、必然性とか、リアリティとか、そういうことがないと言って、映画を否定するのは間違いだ。なぜならこの映画は悪夢なんだから。ドアの向こうは血まみれだ。そう感じたらそうなのだ。感じた以上は助からない。悪夢なんだから。 でも悪夢はとても個人的なものだ。それを映像として人に見せるというのは、ものすごく力のいることだ。無謀なほど、才能がいる。 ダリオ・アルジェントは天才だ。そう思った。映画としてB級であっても、この悪夢系映画力は、天才と呼ぶべきだ。デビッド・リンチほど洗練されてなくても。誰が悪夢を素直に映像化できるか? 黒沢清は考えてそれをやろうとしている。考えたらもうだめなのは、彼はよく分かっているはずなのだ。それでもやっている秀才黒沢清もたいしたもんだと思うが、ダリオ・アルジェントはたぶん、考えていない。 美少女ホラーの歴史的傑作。 「決して、ひとりでは見ないでください」 ゴブリンの音楽が最高。 ラララララララ、ラララララララ、ドーン。 ぞわぞわする。 [このあといきなり結末に触れています。] 今回見て気がついたのは、アメリカ娘がヨーロッパの文化を破壊するっていう構図が描かれているっていうことだ。アルジェントが愛するヨーロッパの魔女文化がアメリカ女によって壊される。そんな悲劇が描かれていた。 初めて見たときから気になっていたのだが、最後にスージーが笑うのだ。崩壊する魔女の館を後にして。あの笑みは、ホラー映画のヒロインのラストの表情としては、ふさわしくない気がしていて、私は逆にそれが好きだったのだが、あれは、ヨーロッパを破壊したアメリカの笑いだったのか?アルジェントはそんな暗い愛情を魔女と、それを殺す新しい魔女に感じていたのか? 深読みしすぎか? でもカッコいい見方じゃないか? 極彩色という言葉が、この映画を語るときに必ず表れる。確かにその通りだ。セットの配色、ライティングの色彩、でたらめに鮮やかだ。特に赤と緑。「サスペリア」は赤と緑だ。 補色。この分かりやすさと大胆さ。そしておそらく、何も考えずにこの色でなければならないと決定している、そのセンスの力強さ。さすがイタリアのホラーだ。 バレエ学校の壁紙の、過剰な装飾性。そこの窓枠の、なぜか何度も繰り返される単純で気持ちの悪い形。 単純なのに、複雑で、深い。考えてねらって真似できるものではない。もし真似できるのなら、この映画が公開された1977年以降、こんなバカバカしく暗く美しい映画がいくつも現れただろう。実際トライした監督は数多くいただろう。でも、私は「サスペリア」のような映画を他に見たことがない。すぐ真似できそうに見えて、誰にもできない。 つまり「サスペリア」は、芸術だ。 バレエ学校の生徒たちが稽古場で寝るシーンが素晴らしい。シーツで囲まれた広い部屋で女の子たちが寝る。消灯で明かりが消えるとテントのように張られたシーツの向こうが赤くなる。赤い光の中で寝る少女たち。ありえないシチュエーションだ。でも、映画を見ているとおかしいと思うタイミングを失う。絵がきれいで圧倒的だからだ。 この映画に出てくるバレエ学校の生徒たちは、少女と呼ぶにはかなりとうが立ちすぎている。それはこの映画の残念なところだ。主人公スージー役のジェシカ・ハーパーは当時27才だった。バレエの世界で27才ってもう学校に行ってる年じゃないだろう。その年であれじゃすっかり終わっている。 他の生徒もみんな大人だ。ありえない。 「フェノミナ」のジェニファー・コネリーが完璧に少女だったことを思うと、「サスペリア」のキャスティングのいい加減さは不思議だ。 でも「フェノミナ」より「サスペリア」の方が圧倒的に面白いから、また不思議だ。正直言って「サスペリア」以外で、ダリオ・アルジェントに感動したことはない。「フェノミナ」は酷かった。ジェニファー・コネリーも「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」の奇跡的な存在感がまるでなかった。 ところが、「サスペリア」のジェシカ・ハーパーは、27才でバレエは踊れないし演技も下手だしカットによってはしわが気になるけど、見事に“美少女ホラーのヒロイン”なのである。不思議だなあ。 ジェシカ・ハーパーは誰が見ても大根役者だが、メイクも表情もそれはどうかっていう女優なのだが、「ファントム・オブ・パラダイス」と「サスペリア」のヒロインであることで、映画史上に残る女優である。私にとっては。 そうか、なんかサイレント映画のヒロインみたいな顔なのが、この映画にぴったりだったのかもしれないな。 この映画はドイツが舞台のイタリア映画なんだけど、セリフは全部英語。もしかしたらイタリア語バージョンもあるのかもしれないが、私が見たのは英語版だけだ。この英語の会話が、アフレコみたいにリアリティがない。英会話の勉強にはちょうどいいかもしれない。こういうセリフを読んでいるみたいな会話は普通ならNGなのだが、「サスペリア」ではなぜかそれも気にならない。これも、この映画が実はサイレントムービーだからかもしれない。 もちろんゴブリンの音楽と音響はものすごく重要だが、セリフは全然重要ではないのだ。音響と色彩と装飾と光でデザインされた非現実的な世界で女が殺される映画。「サスペリア」はそういう映画だ。犯罪的だが、芸術だ。
by denkihanabi
| 2007-06-05 14:00
| 映画ネタ
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