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2006年 11月 27日
ダリもすごいけど、桐野夏生もすごい。
「グロテスク」のときも思ったが、どうしてここまで冷徹に人間の嫌な面を見つめられるのか。しかもそれをエンターテイメントに仕上げてしまう。 最近「冒険の国」という作家デビュー前の小説を読んだが、このときから桐野夏生は「閉塞的な状況にある人間の悪意」をそれがあるのが当然のことであるかのように冷静に描写している。 桐野夏生はまるで心を解剖するように、絶望や殺意や無責任や怠惰や無関心や欲望や疲労や欺瞞や嫉妬や正当化や渇望やわずかばかりの希望や重くのしかかる諦めを、鋭利なメスで切り出して、物語として人々の目の前に正しく並べ直してみせる。 「冒険の国」と「OUT」が大きく違うのは、「冒険の国」が灰色の霧に覆われたような現実の描写のまま終わったのに対し、「OUT」には強い光があることだ。それは希望の光なのか破滅の光なのか分からないが。その光は、殺人的な出口へ、血塗られたカタルシスへ、主人公と読者を導く。クールだ。 小説の登場人物の悪意を見つめることは、作家が自分の中の悪意を見つめることだ。それはキツい作業のはずだが、桐野夏生はそれを途中で投げ出さず、自己憐憫にも流されず、怒りに叫びだすこともなく、隙のない長編小説にしてしまう。「OUT」の主人公、香取雅子のような、すごい女だと思う。
by denkihanabi
| 2006-11-27 20:17
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