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2005年 10月 09日
「リトル・ロマンス」を見たことがありますか?
1979年のアメリカ映画。26年前だ。監督は「明日に向かって撃て!」「スティング」「ガープの世界」などの、ジョージ・ロイ・ヒル。 主演は当時たしか13才のダイアン・レイン。デビュー作にして、彼女の女優歴でこれまでもこれからも、これ以上はあり得ない、素晴らしい映画です。 少年の名前はダニエル。少女の名前はローレン。 ダニエルはパリの貧しいタクシー運転手の息子。ローレンはアメリカ人で、お金持ちの3人目のパパの仕事でヨーロッパに来ている。2人とも中学1年くらいで(小6かな)、住む世界は違うが、たまたまパリで出会う。 2人にはちょっと共通点があった。ふたりとも、中学生にしては頭がよすぎて、浮いた存在だったのだ。ハイデッガーなんかを読んだりしてて、そんなこと知られたら世間的にヤバいので隠している。当然、友だちは少ない。 2人は、初めて、自分みたいなやつに出会った。 なんだか、いつも考えていたことが、嘘みたいに現実になってあらわれたみたいだった。 初めてのデートで、2人はおかしな老人に出会う。話好きのジュリアスというその老人は、素敵な伝説の話をしてくれる。ベニスの「ため息の橋」の下で、太陽が沈む瞬間にキスをした2人は永遠に結ばれるという。ローレンは老人の話にすっかり魅了される。 父親の仕事のため、アメリカに帰らなくてはならなくなったローレンはダニエルに、ベニスに行くために家出をする、と言う。 ただ、伝説の橋の下でキスをするだけのために。 ラブストーリーが好きな人は、絶対見なくちゃいけません。 すげーいい映画です。 ジョージ・ロイ・ヒルという監督は、ただストーリーを語るためだけに映画を撮っているように見える、素晴らしい語り部だ。映像テクニックに走ったり、スペクタクルを見せつけようとしたり、観客の神経を逆撫でして受けようとしたりは、一切しない。ただ、物語を語っているだけなのだが、まったく無駄がなく気が利いていて、なにより面白い。 劇映画として基本的な作り方のようだが、こんな監督は他に知らない。 「リトル・ロマンス」も、まさにそのようなジョージ・ロイ・ヒルらしい、余計なことは何も考えず映画に入っていける、主人公たちと旅ができる、素敵な映画だ。 さっき。 映画を見て、本当に泣いたのはひさしぶりだ。 なんてよくできた物語。なんてうまく語られた映画なんだろう。 でも、当然ながら、そんなことでは泣かない。 泣いたのは、やっぱり、愛はこうじゃなきゃ、って理想型を見せつけられたからだ。 それは、もう、俺のものではない、と分かっているからだ。 初めてこの映画を見たとき、私は17才だったはずだ。その頃も、この映画が好きだった。大学生の時にも見た。そのときも、いい映画だと思ったし好きだった。 でも、泣いたのは、今日が初めてだ。 泣いたのは、「ため息の橋の下のキス」の伝説が、作り話だったと分かるあのシーンだ。映像的には、どってことない場面だ。3人が、階段の踊り場のようなところで話しているだけだ。 あの話が、作り話だってことをジュリアスがバラすわけではない。アタマのいいローレンが気づいてしまう、というよりは、最初から多分気がついていたことを、口にしてしまうのだ。 永遠の愛の伝説は嘘。 ということは、今ここに確かにあるように感じられる、愛、も、嘘、かもしれない。 ダニエルはベニス行きをあきらめかける。だって、全部嘘なんだから意味がない。でも、ジュリアスが言う。 ”You could make it true.” 結局、そういうことなんだ。そういうことなんだと、思う。 ジュリアスの演説を聞いた後、その場を立ち去ろうとするダニエルにローレンが泣き顔で聞く。 「どこに行くの」 ダニエルが答える。 「ベニス」 カッコいい。完璧だ。 ジョージ・ロイ・ヒルは1922年生まれで、この13才のラブストーリーを撮ったとき56才くらいだったはずだ。 そうだろうな、と思う。 この映画の、ロマンチックでピュアな愛の、冷静なやさしい描き方は、多分若くてはできない。 もちろん、そんなことは、初めて見たときには考えもしなかった。 2人がやろうとしていることは、たかがキスだ。 たかが、キス。 17才の頃には、まさか自分が「たかがキス」なんてことを言うような大人になるとは思っていなかったよ。 2人が、夕陽の橋の下でキスするシーンは、意外なほどあっさりしている。その節度のある描き方に、この映画の誠実さと品性を感じる。 もうひとつ。 ラストで、アメリカに帰るローレンがダニエルの横を、ダニエルの方を見ないで走り抜けるカットが、好きだ。あの潔さに、信じる力を感じる。 音楽はジョルジュ・ドルリュー。フランソワ・トリュフォーの映画で知られた人だ。舞台がパリなのといい、ダニエルが シネ・フィルなのといい、ジョージ・ロイ・ヒルのトリュフォー映画へのオマージュが感じられるのも、うれしい。 いい映画です。 追記。 2人がとてもアタマのいい子だという設定のため、ロマンチックな物語がどこかクールな印象になっているのが、多分、この映画が万人に愛される作品になれない弱点でしょう。例えば、2人が家出の計画を話すとき「1週間くらいはなんとかなる」とか、冷静に計算しちゃうんです。その一方で伝説のキスとか思ってるくせに。でも、そういうどこか冷たいところが、私は好きです。
by denkihanabi
| 2005-10-09 03:21
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