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2005年 04月 08日
今夜はマンガです。
manamizwさんのblogで、アツく語られているのを読んで、私も読んでみたくなりました。 魚喃キリコ(なななんきりこ、と読むらしい)のマンガを読むのは初めてだ。 小説のようなマンガだ。 一人称の短編小説集。 余白が多く、絵以上に印象的な言葉が、レイアウトされている。 イラストレーターの塔子。 塔子と、同居しているOLのちひろ。 フリーターの里子。 ホテトルで働く秋代。 4人の女性の生活を描いた短編が、同居している2人以外はお互い出会うこともなく平行して進んで行く。 このマンガの絵は、人物の目の印象が異常に薄い。 たいてい、マンガの登場人物は目を強調して描かれていることが多いと思う。瞳に星が散っている少女マンガはもちろん、男性のマンガでも目の強さがその人物のキャラクターを表現しているものだ。 ところが、この「strawberry shortcakes」では、指の表情や服の動きは簡素な強い描線でていねいに描かれているにもかかわらず、目の存在はひどく控えめだ。黒目が丸く描かれているコマは少ないし、人物がこちらを見ることはほとんどない。いつも横や斜めを見ていたり、目を伏せていたりする。 “鈴木さん”こと里子にいたっては、わざと目だけいい加減に描いたような、丸描いてちょんみたいな目に何度もさせられてしまっている。 相手の目を見ない、というのはコミュニケーションを拒絶する姿勢だ。無視にせよ、服従にせよ、対等な会話を求めていない。 このマンガの女性たちは、読者に語りかけて来ていない。 じゃあいいやバイバイ、と本を閉じてしまえばそれで終わりなのだが、もしこの女たちが気になって彼女たちの生活を読もうとすると、読者はまるで主人公たちに寄り添って、彼女たちの頭の中の声を聞くことになる。 『そばにいるよ、 そばにいるよ、 そばにいるよ いつだって って 心ン中で叫ぶ』 黒く塗りつぶされたコマに、白い文字で繊細にレイアウトされた言葉を読むとき、読者は彼女の頭ン中から彼女と同じ方向を見ている。 私は男なので、彼女たちの頭の中の声を聞いても、完全に同化することはない。 少し冷めて、同じ方向を見ている。 「マルコヴィッチの穴」みたいだ。 面白かった。実は何ケ所か笑った。 このマンガは映画化されるらしい。 肉体を持った俳優で、この視線の遊戯は成立するのだろうか? 4人の主人公たちの中で、一番ドラマチックなのは秋代だ。 映画化するとき、誰かをメインに持って来るなら、秋代だろう。 秋代には好きな男がいる。学生時代からの友達の菊地という男。だが2人の関係はずっと友達以上にはならないでいる。長い片想いだ。 秋代の仕事はホテトル嬢だ。 売れっ子で、何人もの男たちとセックスをするが、他の男とセックスしてても『頭ン中ではそればっかり 菊地のことだけ 菊地菊地菊地』 という状態だ。 実らぬ恋を心に秘めた娼婦。 秋代はカッコいい。でも、よく分からない。 なぜ、風俗で働いてるのか?はっきりした将来設計に乗っ取ってのことらしいのだが、その設計は冗談みたいに虚しい。 そもそも菊地のどこがそんなにいいのか? 彼女には何かが決定的に欠けていて、脳内恋愛をしてバランスをとらなければやっていけない、そのための対象が必要なのだ、そんなふうに見える。 その欠けているものが何かは、提示されないが。 そういう見方をすると、他の3人もみな何かが欠けているのを自分に隠して生きているように思えてくる。 でも、このマンガは欠けているものを追求したり、解決へ物語を進めたりはしない。 余白は余白のままに。 そのため、読者は、特に女性の読者は、彼女たちの頭ン中の言葉が、自分の頭ン中にも同時に生まれているように感じられるのだろう。 視線と余白。 映画でそれを表現できるのか、なるべく期待しないで待とうと思う。 たった一回だけ、こちらを見る、メガネ越しの秋代の目が、印象的。 204ページ。
by denkihanabi
| 2005-04-08 01:47
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