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2008年 11月 29日
煙草の煙、と言えばレイチェルである。
デッガードは、タイレルコーポレーションのピラミッド型の高層ビルの一室ではじめてレイチェルに会う。レイチェルはタイレル社長の秘書だ。奇妙にレトロな2019年型モードを完璧に着こなしている。 デッガードはタイレル社長のリクエストで、人間であるはずのレイチェルにレプリカント・テストをすることになる。デッガードはブレードランナー、レプリカント退治のプロだ。 VKテストと呼ばれるそのテストは、一連の神経を逆撫でする質問に対する被験者の瞳孔の反応を見る。デッガードは広いテーブルを挟んでレイチェルと対面する。 その不必要に広い部屋の一面は一枚ガラスの窓になっていて、憂鬱な都市に沈む夕陽がオレンジ色の光を流し込んでいる。レイチェルはその窓を背にして、背もたれの大きな黒い椅子に座っている。 「煙草を吸ってもいい?」とレイチェルは聞く。 「雑誌に女のヌード写真がある」 「これはレプリカント・テストなの?それともレズビアン・テスト?」 レイチェルは質問に答えながら、煙草の煙を吐き出す。煙は窓からの光を受けて有機的な動きで白く広がり、レイチェルの完璧に整った顔を隠す。 学生の頃8mm映画でこのシーンの真似をした。完璧な美女は身近にいなかったので、友人の男が煙草を吸うシーンでやってみることにした。やむをえない。大学の広い部屋を真っ暗にして、窓をひとつだけ開けた。窓を背にして友人を立たせ、カメラを真正面に構えた。友人が煙草を吸うと、白い煙が有機的に広がった。 が、友人の顔は真っ黒だった。ねらいと違った。レイチェルの頰には白い光が当たり、美しい顔の造形が仄暗く浮かび上がっていた。そうしたかったのだけれど、私の撮った絵は白い煙草の煙以外、真っ黒だった。 ライティング、という大切なことがあることに私は気が付いた。気がついたけれど、やり方が分からなかった。 もしそこで、徹底的に研究したりしていれば、私はカメラマンになれたかもしれないな。でも、怠け者で移り気な私は、そのシーンをそのままにしてしまった。映画も完成しなかった。 「ブレードランナー」は26年前の映画だが、あれ以上美しい煙草の煙は、その後も見たことがない。映画史上最も美しい煙草の煙だと、私は思う。 「ブレードランナー」
by denkihanabi
| 2008-11-29 12:49
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