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2008年 04月 21日
殺伐とした、コーエン兄弟の映画。
あまりにも、果てしなく、殺伐としている。 テキサスの荒野にいくつもの死体が転がっている。麻薬取引を巡る銃撃戦があったらしい。ハンティングに来ていた男ルウェインが、それを発見する。 この男、ベトナム戦争で死体をずいぶん見てきたらしく、まったく動じない。この無感動な反応が、荒涼とした風景の中で起きた事件を、さらに荒涼とした感じにする。ルウェインは現場に残された大金の入ったバッグを持ち帰る。そのために、彼は死神に追われることになる。 注意。この後、結末まで全部書いてます。 アントン・シガーという殺し屋が、ルウェインを追う。シガーはルウェイン以上に、死に対して何の感情も見せない。 シガーは淡々と人を殺して行く。逮捕した警官を殺し、車を手に入れるために運転手を殺し、対立組織のメキシコ人を殺し、ルウェインの泊まっているホテルのフロントを殺す。 町中で発砲して人を殺しても、通りには他の人の気配がまるでない。テキサスの街の人の少なさは、怖い。 ハビエル・バルデムは確かに怪演だ。撮影中ずっとあの目つきをしていたら、本当に異常者になってしまいそうだ。 日本では宇宙人ジョーンズとして知られる保安官エドは「この星の犯罪は理解できない」と、なかばあきらめ顔だ。 この映画にサスペンスはない。アントン・シガーが圧倒的に強い絶対悪であるのが分かっているからだ。シガーからは、誰も逃げられない。 殺人の描写は「淡々と」という言葉がぴったりだ。私は「2001年宇宙の旅」を思い出した。宇宙船の危機が「淡々と」描かれる。あの感じに似ている。弾が当たれば血が出る。血は下に流れるから、ブーツに溜まる。あたりまえだ。そういう描き方。 ここまでの書き方で感じられたかと思うが、私はこの映画、あまり面白いと思わなかった。いや、面白くないわけではないのだが、もうこういうの、どうでもいいやって感じてしまう映画なのだ。 もちろんよくできている。コーエン兄弟は今、世界で一番映画で物語を語るのがうまい監督のうちのふたりだ。 でも、「ファーゴ」のときのように、“すげえ”とは感じなかった。 この映画には“あきらめ”がある。宮崎駿の「ハウルの動く城」にも“あきらめ”を感じたが、この映画の“あきらめ”は、さらに根深い。 いい映画だ。 いい映画だが、 世界が必要としているのは、こういう映画ではない。 エドはシガーが金を取りに来たモーテルの部屋に行き、シガーとほんの数メートルの場所まで近づくが、シガーに会うことはない。 シガーはルウェインの妻、カーラを“約束通り”殺したのかどうか?決定的なシーンは描かれない。 そして、シガーが交通事故に遭うエピソード。あれは、なんなのだろう。神が、シガーを殺しそこねたということなのか。 正直言って、シガーがカーラを淡々と殺すシーンを見たかった。 きっと、暗いカタルシスがあっただろう。 コーエン兄弟の映画では、殺人の動機はたいてい、金だ。 この映画でもそう。 「誰でもいいから殺してみたかった」みたいなことは、描かれない。実は、私はこれをいつも不思議に思っている。コーエン兄弟は“純粋殺意”のようなものを描きそうな作家なのに、必ず“金”という現実的な動機を用意する。 アントン・シガーとルウェインも、“金”がなければ出会うことはなかった。 原題は「No Country for Old Men」。「年寄りが住める国はない」。 日本でも最近、年寄りがよく殺されるしな。
by denkihanabi
| 2008-04-21 00:13
| 映画ネタ
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