カテゴリ
検索
以前の記事
フォロー中のブログ
映画・読書日記 レモ茶のお絵かき日記。 とりあえずどこかに シネマ親父の“日々是妄言” 嘆息熱気球(アーカイブ) 2+2=5 まいにち酒飲み *- Petit sou... the borderland befounddead 映画の心理プロファイル tropicalia ■■■ another unti... ◎ ○ O o 。_ 。... ::: C_i_N_E_... かたすみの映画小屋 酒の日々、薔薇の日々、本... t r a v e l ... シネマの手帖 僻眼から見た景色 スキマワード(ズ)/ni... keep going メカpanda乗りのメデ... conta備忘録 finn. ちょびまめにっき 最新のトラックバック
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2006年 08月 04日
美大っていいなーって思ってた。行ってみたかったな。
自分が大学生の頃はそうでもなかったんだけど、おっさんになってから、元および現アート系学校の人の話を聞いて、楽しそうやなそれって思った。なんか、寝袋で教室に泊まり込んで作品制作してるとか、そういう話聞くと。 この映画でも、マヤマが机の下で寝てるシーンがあったな。 私はそんなふうに、学校でやることに一生懸命になったことはない。 でも、絵とか彫刻とか音楽とか写真とか映画とか、そんなのを学校で勉強するっていうのも、考えようによってはしんどいね。 資格があるわけではないし、合格ラインがはっきりあるわけでもない。 思いが強くても行き着けない可能性が高い、という点では芸術と恋は似ているのかもしれない。 自分の気持ちがすべてなのに、結果は相手しだいってとこも。 この映画、美大が舞台だけど、芸術的な問題はそれほど描かれない。 約2名、才能にあふれた人間がいる。モリタとハグ、この2人は別格(モリタ役の伊勢谷くんがすごくかっこいい)。残りのみなさんの芸術家の卵的悩みは、全然描かれない。タケモトとマヤマとヤマダは、恋以前にそっちはあきらめちゃってるみたいに淡白だ。 美大でなくても成り立つテーマなんだ。 「あすなろ白書」っていう昔のテレビドラマに似てるなって思った。若かりし頃のキムタクが冴えない男の子の役で出ててすげーいい味を出してたドラマだ。あのキムタクはよかった。その辺にいそうなリアリティがあった。 主人公のタケモトを演じた桜井翔って人はジャニーズらしい。キムタクみたいに化けるだろうか。ちょっと固い気もする。もう人気あるんだろうな。私は全然知らなかったけど。 ヤマダ役の関めぐみという子が、鼻がすげー高くてタイプだった。最初、あれ栗山千明?って思ったけど目が違った。あの美貌と身長は、片想いフラレ女の役としてはミスキャストじゃないか。私ならハグよりリカさんよりヤマダだな。あんなのが学校にいたらヤバい。ちなみに私は高校のとき隣のクラスのヤマダさんって子に片想いしてたことがある。きれいな子だった。彼女を見るために放課後図書館に通った。関係ないけど。 青春はセックスとオナニーなんだけどね。半分くらいは。少なくとも男にとっては。 この映画から排除されているものたち。 セックス、嫉妬(恋についての嫉妬も、才能に対する嫉妬も)、心変わり、パクり、自己嫌悪(マヤマは感じてるっぽかったけど)、暴力、攻撃、破壊衝動(モリタが少し発揮するけど)。 こう書くと、ロックじゃねえなこの映画。 人を傷つけたり、心と現実を同時に波打たせたりするものが、意識的にはずされている。 その中で、誰かを傷つけた、とか、誰かを助けたい、とかそういう感情が語られる。 やさしい。さわやかでもある。 でも、甘っちょろいぜ。 blogをはじめた頃、その文章のソフトさにこういう違和感を感じた。 きっと、現実があまりにも残酷なのを子どもの頃に知ってしまった世代なのかもしれないな。この映画の主人公たちや、観客や、マンガの読者や、blogで私が読ませてもらったみなさんは。 タケモトくんは、果てしなくいい人だ。 たまたま緻密な構造物に対する感性が鋭くて、指先が器用で昔の文化に惹かれる感覚を持っていて、で、他のことには不器用だからたぶん高校では美術部の部長とかをしてて、美大に進学したのだ。滑り止めにフツーの大学もいくつか受けてただろう。 ハナモト先生はタケモトくんみたいな人がハグといてくれたら本当はいいんだけどね、なんて言うが、それは残酷なご意見だろう。俯瞰的な、大人の、10年後にハグが今よりもっともっと深く傷ついた後ならありえる、でもその傷の深淵をタケモトくんは見ることがないだろうねと最初から決めつけている、そういう意見だ。やさしい人の残酷な意見。 タケモトくんは果てしなくいい人だ。 私なら、モリタ先輩のバッグの中のスケッチブックを覗き見てしまったあとは、モリタ先輩にそっくりのでもイケてない絵を何枚も描いてそれなりにうまいじゃんとか恥ずかしい自己満足のもとにそれを人に見せてしまったりしただろうな。この映画、そういうとこが描かれてなかったのが残念だ。 でも、だからと言って、タケモトくんが自転車でひたすら走ってしまう、あの無意味なエネルギーを否定できる者は誰もいない。人間は本来、無意味なエネルギーに満ちているのだ。子どもにはもちろん、大人にだってそれはある。だいたい、意味のあることなんかに意味なんかあるのか? いい人ってのは、いる。 この世に必要な人たちだ。 タケモトくんが、モリタ先輩に、ハグを助けられるのはモリタさんだけだって叫びにいくのは、理にかなっていない。でも、モリタ先輩はその勢いに動かされる。無駄なエネルギーや意味のない行いには、力があるのだ。 この映画の弱点は、ハグの描き方がとても薄いところだろう。 マヤマが「人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった」その瞬間の、タケモトの視線のハグは美しい。でもね、そのまんまなの。ずっと。天才に恵まれた自閉症的で善良な美少女のままなの。あれがねー、この映画をつまらなくしてる。 毒がないわけないだろう。 「海行こうぜ」って言われて「私、海嫌い」くらい言えよ。とか思った。 やっぱね、天才は残酷じゃなきゃ、魅力ないよ。 ハグがすごすぎて、モリタが落ち込むくらいなのかと思ったら、ぜーんぜん、かわいこちゃんなんだものずっと。ものたりねー。 キャンバスを真っ黒に塗ったのは、壁を作ったっていう意味だったのかもしれないけど、本来は違うはずだ。真っ黒なもんは、彼女の中にあるんだ。 ハグがヘッドホンをして絵筆をキャンバスに叩き付けるのは、カッコよかったけど。 恋が一方通行のときはつらい。惚れた相手には愛されず、そうでもない相手には慕われる。愛する人に愛されるなんて奇跡は絶対に自分には訪れないんじゃないかって絶望的になる。 リカを尾行するマヤマを尾行するヤマダ。きっとどこかにヤマダを好きな男もいるだろう。でもそいつじゃだめなのだ。 この映画の登場人物たちはみんな頑固もので、とりあえずこっちでいいか、とか全然しない。きれいな気持ちの一方通行。 で、人間としては好きだけど恋の相手ではない人に「好きだ」と言われたときの返事が「ありがとう」だ。 マヤマがヤマダに、ハグがタケモトに言う言葉。 タケモトはその言葉で救われたらしい。ほんとに、とことんいい人だ。 ヤマダはどうだったんだろう?酔っぱらって覚えてないかもな。 私は高校のときに好きだったヤマダさんについに告白できないまま卒業した。この話には後日談がある。 卒業20周年の同窓会で、20年ぶりにヤマダさんに会ったのだ。当然お互い結婚して子どもがいた。嘘みたいな話だが、ヤマダさんは相変わらず美しかった。 私は10代のときの勇気のない自分に落とし前をつける必要があった。私はヤマダさんに「高校のときヤマダさんがものすごく好きでした」と告白した。 そのとき彼女はなんて答えたかな。 「ありがとうございます」って言ったかもしれない。
by denkihanabi
| 2006-08-04 21:55
| 映画ネタ
|
ファン申請 |
||