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2006年 02月 27日
これは・・・。
言葉が追いつかない。 酷い話だ。映画がではなく、描かれている現実、内戦がだ。 できることなら、体験したくないし、見ないですませたい。 でも、現実だ。 ルワンダというアフリカの国の、フツ族とツチ族の紛争、そして虐殺のニュースは知っていた。新聞やテレビで見たのだ。もの凄く酷いことがこの世界にはある。 9.11やサラエボより、ルワンダのニュースが強烈だったのは、爆弾やマシンガンではなく、刃物で虐殺しているという部分だった。爆弾は現実感を失わせる。ヒロシマの虐殺の現実感は、原爆の爆発のその後の日々の描写にある。原爆のキノコ雲には現実感はない。 でもルワンダの虐殺のニュースは、ナタで村人を皆殺しにするというような、えげつないものだった。刃物はリアルだ。それは生き物を殺す実感をともなう。 フツ族の民兵は子どもたちも殺す。子どもを殺すのはツチ族を根絶やしにするためだ。池田小学校の子どもたちを殺した宅間という男が100万人単位で、ナタと銃を手にあなたの町になだれこんできたら、どうなる? ルワンダで起きたことは、そういうことだ。 想像しただけで、ものすごく嫌な気分になる。 だが、アフリカは遠い。ニューヨークもイラクもサラエボも1945年も遠いが、アフリカの遠さはまた別格だ。 遠さは、問題の解決のために何もしないための、十分な理由になる。この映画でジャーナリストが言うように、世界の人々はニュースを見て、ああなんてひどいことをと顔をしかめて夕食を食べるのだ。 私もそうだった。今でもそうだ。 この映画はドキュメンタリーではない。オーソドックスな劇映画だ。監督のテリー・ジョージという人は「父の祈りを」というIRAを扱った重苦しい映画の脚本を書いた人らしい。硬派の社会派だ。 主人公ポールをドン・チードルが演じている。すばらしい演技だと思う。私はこの人の映画をあまり見ていないのが幸いして、すっかりこの孤軍奮闘するお父さんに感情移入してしまった。 ポールはまず家族を守ることを考え、次にホテルの人々のことを考える。ホテルは彼の城だ。しかし武器はない。 絶対助からないという絶望的な状況で、ギリギリのところで機転を効かせてポールは生き延びていく。そんなうまくいくかよ、ってつっこみを入れる隙もない緊迫感だ。 食料の買い出しに行ったポールは、道路を埋め尽くす無数の死体を見る。道のずっと先まで死体死体死体。 そのあとのシーンで、ホテルの中庭で陽の光を浴びて遊ぶ子どもたちの姿が映し出される。この対比が見事だ。ポールは無力感にとらわれながら、遊ぶ子どもたちを見つめる。 夜、ポールは妻に言う。もしも民兵がホテルに入ってきたら屋上に逃げて、子どもを抱いて飛び降りろと。ナタで殺されるよりましだと。ポールは死体を見ている。子どもたちが殺されているのも知っている。殺されなかった女たちがセックスのための家畜のように扱われているのも知っている。救援が来ないことも知っている。ポールの気持ちは痛いほど分かる。状況は絶望的なのだ。 でも、ポールはあきらめない。1日でも、1分でも生き延びるため、考え、交渉し、行動する。 選ばれた数家族だけが国外に退去できるようになったとき、ポールは妻と子どもをトラックに乗せ、自分はホテルに残る。あれはそうするしかないだろう。ポールがいなくなったら、誰もホテルの人たちを守れない。家族は安全なところに送り出した。あとはホテルの人々だ。その判断は致命的に裏目に出るのだが。 ポールは政情不安定な国で、外資の一流ホテルで働き、金を貯め国の内外の要人に数々の贈り物をして人脈を作っている。いざというとき助けて貰うためだ。 ポールは始め、そのカネとコネを自分と家族のためにだけ使うつもりだった。騒乱が始まった当初、ポールは隣人を見捨てた。 だが本当に危機が家族に迫ったとき、ポールは家族だけを救うというわけにはいかなくなってしまう。ポールはフツ族だが妻はツチ族だ。ツチ族の家族を持つ金持ちのフツ族の男を頼って近所のツチ族が集まってきてしまう。全員を見捨てて自分たちだけ逃げることは不可能だ。ポールはいつしかツチ族の難民たちを守る立場になってしまう。 ポールはカネとコネと知恵をフル稼働して危機を乗り越えていく。 だが、カネとコネはやがて尽きる。カネとコネがなくなったとき、人を支えるのは知恵と人望だ。ポールはホテルマンとして人望があった。それは彼の勤勉さと誠実さゆえだろう。彼が生き延びられたのは、数々の機転とラッキーのおかげだが、必要なものは内戦が始まる前に用意されていたわけだ。 金、コネ、知恵、人望、誠実さ、愛情、行動力、機転、家族、仕事、あきらめない強さ、それに運。暴力を使わずに暴力の中を生きていくのは、ものすごく大変なことだ。 民兵がなだれこんできたホテルの中で、シャワールームに隠れていた家族をポールが見つけるシーン。自分の言いつけ通り自殺してしまったかもしれない家族が生きていた。妻は子どもたちをかばって、シャワーのノズルを銃のように構えている。 ホッとしたポールと妻は、今にも民兵に殺されるかもしれない危険な状況の中で笑い出してしまう。「そんなものを構えてどうするつもりだったんだ?」 あそこで笑うという演出はすごくうまいと思う。ポールと家族が築いてきた美しい時間が、こぼれだしたようだった。 エンドロールの歌がいい。ストレートな歌詞で、涙が出そうになった。でも、あまりにも映画が重いのでサントラを買えなかった。
by denkihanabi
| 2006-02-27 23:42
| 映画ネタ
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