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2006年 02月 16日
テーブルとコーヒーと煙草と2人か3人の人物。それだけで作られたジム・ジャームッシュの短編映画集。
昔「ミステリー・トレイン」を見に行ったとき、この中の一編がおまけで上映されていたと思う。 一昨年私はビデオで4分のショートフィルムを自主制作したのだが、それが同じようにカフェのテーブルの回りだけを舞台にしたコーヒーをめぐる作品で、あ、そうかジャームッシュに影響されてたんだ、と気がついた。マネをしたつもりはないのだが、多分頭の中に「ミステリー・トレイン」のときの短編があったんだろう。 カフェのテーブルは映画でよく描かれる。タランティーノもゴダールもデビッド・リンチもカフェが好きだ。車の中、ベッドルーム、というシチュエーションと並んで、なにかとても映画的な場所であるらしい。 ジム・ジャームッシュは人物に対して、独特の近づき方をする監督で、ジャームッシュの撮るカフェは、やはり彼ならでは空間になっている。 噛み合わない会話と、居心地の悪さ、でも一緒にいることの暖かさ。それが小さな笑いを呼ぶ。「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の有名なテレビを見るシーン以来、この奇妙なコミュニケーションのズレと距離感が、ジャームッシュの魅力だ。 「双子」というエピソード(たぶんこれを昔私は見たんだと思う)で、「Yes」と「No」を同時にいうジョイ・リーとサンキ・リーの黒人の双子に、スティーブ・ブシェミのエルビスファンの白人が話しかけていくところのおかしさ。彼らは3人とも頑固でマイペースで肝心なことを話すのが苦手でやさしくて無関心だ。なぜかテーブルを共にするが、噛み合わない。 そういえば「ミステリー・トレイン」では、永瀬正敏と工藤夕紀が日本語で噛み合わない2人を演じていて、日本語でもしっかりジャームッシュになっていた。「俺はいつでもハッピーだぜ」って不機嫌そうに言う永瀬のセリフが好きだった。 「カリフォルニアのどこかで」というエピソードは、トム・ウェイツとイギー・ポップだ。どちらも気むずかしそうなミュージシャンなのだが、イギー・ポップが妙に人のいいヤツを演じているのがおかしい。 「ジムと呼んでくれ。いや、ジミーとかイギーとかジギーとか、みんないろんな呼び方をするんだが、うん、やっぱりイギーと呼んでくれ」「俺はどっちでもいいぜ、ジム」 名前を間違えるというのは、噛み合わない会話の基本らしく、いくつものエピソードで繰り返し使われていた。 それにしても、もともと俳優ではないこの2人から、ここまで自然な雰囲気を引き出すのはどうやるんだろう。まるで1回で通して撮ってしまったかのようにさえ見える自然さだが、当然そんなはずはない。ジャームッシュはこの2人を長編ですでに撮っている。その信頼感が大きいのだろう。「コーヒー&シガレッツ」を見ていると、ジャームッシュの映画作りは、脚本やカメラを用意する前から始まっているんだなと感じる。映画と関係のないところで俳優やミュージシャンに会って、話したりコーヒーを飲んだり煙草を吸ったりしている間に、関係が作られアイディアが生まれ、それがいずれ映画になる。そんなやり方なんじゃないだろうか。 他のエピソードでは、なんとホワイト・ストライプスのメグとジャックが演技をしていたり、ウータンクランのメンバーがビル・マーレイと絡んだりしているが、本当にこういう難しそうな人たちをカメラの前で喋らせ、魅力をすくい取りながら、しっかりジャームッシュ節に仕上げているのは、見事だ。 ケイト・ブランシェットはここで、セレブな女優のケイト自身と、その従姉妹のパンク女シェリーを演じる。対照的なキャラクターの2人だ。 ケイト・ブランシェットという女優が本当にうまいのはもう分かっていることなのだが、この一人二役はアカデミー賞級だ。主演女優賞が2つ取れる。それともこのくらいは軽いのかな。 これは合成なのでアドリブはきかない。かっちり脚本が書き込まれている印象だ。だがそこはもう、女優の力である。笑い方や、視線の向け方そらし方、セリフの出し方、見事に2人の女の噛み合わない会話を演じきっている。 ジャームッシュは俳優への出演交渉の電話を自分でかけるらしいのだが、ケイトで一人二役というアイディアを思いついて本人がOKしたときはガッツポーズがでたんじゃないかな。 いつものジャームッシュ的ではない作品だが、これはこれで私は好きだ。 この短編集は10年以上に渡って撮りためてきたものらしい。 初期のものはザラッとした質感で不機嫌なムードが漂っているが、後半のものは映像もすっきりとしてきて内容にも計算されたユーモアがあるように感じられる。 いわゆるジャームッシュらしいのは初期の作品だが、当たり前のことだがジャームッシュも少しづつ変化しているのだろう。 ジャームッシュの映画の白黒の映像を見たのは久しぶりで、そういえば一時、白黒が流行ったなあ、とか思った。このシリーズは、これからも白黒で撮り続けるんだろうな。きっと。
by denkihanabi
| 2006-02-16 15:21
| 映画ネタ
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