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2005年 11月 18日
マイケル・ベイは、ハリウッドのエリートだ。
大学生の時にフランク・キャプラ賞という学生映画の賞をとり、26才の時にはもう、TVコマーシャルの世界で有名なクリオ賞などを受賞、その後MTVアワードなどの賞も総なめにして、31才で全米監督連盟のベストCMディレクターに選ばれた。らしい。実はその頃のマイケル・ベイの作品は、よく知らない。きっと見たことがあるビデオやCMがいくつもあるのだろうが。 その後ジェリー・ブラッカイマーと組んで「バッド・ボーイズ」「ザ・ロック」「アルマゲドン」「パールハーバー」と大ヒットアクション大作を連発してきた。 良くも悪くも、典型的な現代のハリウッド映画を撮る監督だ。 アホのレニー・ハーリンと並んで爆発させるのが好きな監督なんだが、私はマイケル・ベイのいいところは爆発シーンではなくて、なんでもないカットをすごくきれいに撮るところだと思う。「アルマゲドン」はつまらなかったけれど、ヘリコプターが飛んでくる角度が完璧だったり、世界の街の様子を点描するカットが各国の観光局のCMのように美しかったりする。「パールハーバー」の真珠湾攻撃のシークエンスは見応えがあったが、一方でラブシーンの異常な美しさは戦争映画を骨抜きのダメ映画にしてしまうほどだった(笑)。 アクション派なのに、きれい好き。コマーシャル出身らしい。 ストーリーが破綻していることが多いので、いざとなったら爆発とクラッシュで強引に展開してしまうのだが、爆発にもなにか美的なこだわりを感じる。 さて「アイランド」はジェリー・ブラッカイマー抜きで、マイケル・ベイが自分でプロデュースしている。 生体移植のために培養されているクローン人間たちが心を持ち、管理された社会から脱出する、というアイディアはどこか昔テレビで見たB級映画のようだ。でも、最近マイケル・ベイがプロデューサーとして「悪魔のいけにえ」や「悪魔の棲む家」をリメイクしているところを見ると、この人は昔自分が好きだった映画を再生産しようとしていて、今度は自分で「ブレードランナー」をやろうとしたんじゃないかと思う。 レプリカント側から見た「ブレードランナー」だ。 オープニングの、スカーレット・ヨハンソンが光る布に包まれたビューティショットから、もう、ザッツ・アメリカン・コマーシャルフォトっていう映像だ。 この映画で印象的なのは、光の使い方だ。逆光をカメラのレンズに投げ込むようなライティングを多用している。新しい手口ではないのだが、ここまで過剰でしかもキレがいいのは珍しい。 赤ん坊を生んだクローンが殺されるシーンの縦にのびる光のにじみや、駅に追っ手がやってくるシーンの背景がまるで見えないほどのスモークと逆光。クローンのカップルが初めて結ばれるときの、キスする2人の間から光があふれ出すようなライティング。 あのラブシーンは、ほとんどキスの繰り返しだけで作られていて、2人の手前に何かガラスの瓶のようなものが何本かあって、そのガラス越しにカメラが動いて光を屈折させることで、非現実的な高揚感を作り出していた。「里見八犬伝」の薬師丸ひろ子のラブシーン並みにバカバカしいが、比べものにならないほど美しいシーンだった。 こういうライティングは、実はひとつひとつ手間がかかるもので、予算のない日本映画ではなかなか再現できない。たとえ一本予算のある映画があっても、その積み重ねができない。VFXももちろんだが、ライティング技術の高さもアメリカ映画の独壇場だと思う。 この映画はまさにそれだ。 シナリオはザルである。 あれほどアイランドに行くことを夢見ていたクローンの女が、そう簡単に男の言葉を信じるはずがない。でもそこはアクションシーンでクリア。あの非合法特殊部隊みたいなのは、なんなんだ?でもって、闘争的な精神は極力排除されているはずのクローンの2人の強さはなんなんだ?という不思議は、派手なクラッシュシーンの連発でクリア。最大の弱点、殺されたのはクローンかクライアントか?特殊部隊も博士もそこを全然疑わないという間抜けな展開は、前述の美しいラブシーンでクリア。 という具合だ。 このシナリオはもともとこんなに酷かったんだろうか?アクションシーンを優先させるために監督がシナリオを改悪したのではないかと思うほど、穴だらけのストーリーだった。 アクションシーンはかなりやりすぎで、私は何回か失笑してしまったが、でもひとつひとつはとてもよくできているので、それを見せるためのストーリーならまあ、ザルでもOKということなのか。 そうそう、これだけの破壊と銃撃を繰り返せば相当の人が死んでいるはずだが、流血表現を最小限に(つまり主人公の額のかすり傷程度に)押さえて、人死にがほとんど感じられない演出は、見事に公開時のレイティングもクリアしたようで、セックスシーンがキスシーンだったのと並んで、この辺にこの監督の商売上手さを感じる。 「ブレードランナー」も決してよく書けたシナリオではなかった。ストーリーはむしろ退屈だった。ただ言うまでもないが、圧倒的に見たこともない世界観を提示してくれたのだ。 「アイランド」も、映像は美しい。でもその美しさは、どこかで見たことのあるイメージの集積だ。ワンシーンワンシーンはよく撮れているが、新しい世界観や価値観は感じられない。 でも商業映画としては「アイランド」の方が受け入れられやすいのだろう。マイケル・ベイの優秀な点はそこにあり、誰も彼を映画作家と呼ばない理由もそこにある。 消費される超大作。それがマイケル・ベイの映画だ。
by denkihanabi
| 2005-11-18 01:32
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