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2005年 10月 28日
あちこちに書いていますが、私は仲間由紀恵のファンです。街で資生堂のポスターとか貼ってあると、思わず立ち止まって「由紀恵ちゃんきれーだなあ」と見とれてたりします。
この映画の仲間由紀恵もきれいでした。 だからって「SHINOBI」がいい映画だったかというと、それは全然別の話だ。 「バットマン・ビギンズ」を見たときに「SHINOBI」の予告編を見て、ああ、これはこのハリウッド製忍者には絶対かなわないだろうな、って思った。思った通りだった。 「LOVERS」を見たときも、この中国映画にも絶対負けてるんだろうな、と思った。思った通りだった。日本シリーズの阪神くらい大差で負けている。 なんでだろう。 この映画の忍者には「バットマン」の影の軍団のような統率のとれた重量感もないし、「LOVERS」の竹林を自在に飛び回り逆さに滑り降りてくる追っ手のような、圧倒的に美しい動きもない。 なんでだろう、忍者は日本のものなのに。 なんで日本映画は、こう、中途半端なんだろう? 大ワイヤーアクション大会なのかと思ったらそうでもなかった。たしかに、ワイヤーを使った見せ場はあるが、それよりもCGが多い。「HERO」や「LOVERS」よりも、この映画「X-MEN」に近い。明らかにあれを参考にしているキャラクターもある。 今は時代活劇を作りにくい時代なんだと思う。 ハリウッドがテキトーに日本のチャンバラを取り入れ、それと中国のワイヤーアクションやカンフーが結びついて、カッコいいアクションの流れを作っている。それは確かに魅力的だ。 日本には日本の殺陣というものがあるが、昔ながらの殺陣では観客はなかなか満足しないし、また、本格的な殺陣ができる役者は少なくなっているだろう。 例えば、勝新太郎の「座頭市」なら斬り合わずとも、仕込み杖を構えただけで存在が映像を支配する。ワイヤーもCGも必要ない。構えは大切だ。強いヤツはそういうものだ。アメリカ人はそれが分かっていない。あるいはできていない。刀が光ってフォースだのなんだのとご託を並べればいいものではない。 イチローの構えを見ろ。あれが剣の達人だ。達人には形がある。 だが、「SHINOBI」には残念ながら、構えただけで様になる役者がいなかった。 主人公の2人に必殺の剣がないのは、大失敗だと思う。 円月殺法みたいなすごいものは、そう作れないかもしれないが、構えただけで相手がびびり、観客が期待する、そういうものが必要だ。 オダギリ・ジョーと仲間由紀恵の必殺技はCGだ。ところが、そのCGもたいしたことがない。仲間由紀恵の波弦の瞳っていう技、というか超能力の描写には笑ったぜ。やりたいことは分かるんだけど、ギャグでしょう。脳の神経系をカメラが走るのだがデビッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」のオープニングの緊張感には遠く及ばない。これは技術の問題ではない。センスだ。 しかも、波弦の瞳の使いどころを間違っている。あれしかない主人公の必殺技をあそこで使ってどうする。なっとらん。 伊賀の頭領が、仲間由紀恵に「お前は剣が強くもなければ、身が軽いわけでもない。しかし、その瞳じゃ」とか言うのだが、これがこの映画のスタンスそのものだ。「体で勝負できないから、目くらましのCGでね」ってことだ。 オダギリ・ジョーの技は仲間由紀恵よりはましな描かれ方だったが、それにしてもCGだ。いや、CGでもいいのだ。月を背景に飛ぶシーンは(あ、「E.T」好き?とか思うにせよ)カッコいい。でも、その前の構えがなってない。だから、緊張感が生まれない。 静と動、の静の部分が、そこに秘められた葛藤が、ない。 タランティーノの「キル・ビル Vol.1」のクライマックスのチャンバラは酷くて、カリフォルニアのバカはもうチャンバラするな!って思ったが、残念ながらこの映画の忍者たちは、カリフォルニアレベル以下である。 「マトリックス」のキアヌ・リーブスが4ヶ月のトレーニングを積んで撮影に臨んだのは有名な話だが、仲間由紀恵もコマーシャルの仕事は断って殺陣のトレーニングをするべきだった。そうすれば、これはあなたの映画になったのに。 ここ数年で、最も存在感のあった剣客は「たそがれ清衛兵」の田中泯だ。あんな役者がひとり必要だった。「スターウォーズ」の一作目にアレックス・ギネスが出ていた重要性を、みんなもっと認識するべきだ。 「グリーン・ディスティニー」「HERO」「LOVERS」はハリウッド資本の中国映画だ。 面白いのは監督のアン・リーとチャン・イーモウが、それまでまったくアクション系の監督ではなかったことだ。2人とも、ドラマを撮らせたら世界でも屈指のレベルの監督だった。 その企画がどのように進んだのかは知らないが、それらの映画が「マトリックス」で味をしめたハリウッドの資本家たちのアジア戦略として製作されたということは、容易に推察できる。 そう考えると、監督が「恋人たちの食卓」や「初恋のきた道」の監督だということの意味が重要になってくる。彼らはそれぞれ、活劇に興味があっただろうしヴィジュアリストとしても優れていただろうが、それ以上にしっかりとしたドラマが撮れる監督だった。 ハリウッドがバックアップする以上、アクションやVFXには潤沢な資金と豊富な技術的経験があるのだ。そこは、監督が指示する必要がない。スペシャリストにイメージを伝えればよい。監督は、ヴィジュアルイフェクトを物語を語る道具として使えばよい。逆に言えば、技術に溺れず、物語を語れる人材が監督として必要だ。 あくまで想像だが、おそらく、ハリウッドの資本家はそういう計算で、これらの監督の作品に出資したのではないだろうか。 「カンフー・ハッスル」もそうだ。チャウ・シンチーは肉体的にも技術的にもあの手の映画に優れているが、それ以上に天才的コメディ作家だ。ハリウッドの資本家は、そこに出資したのだと思う。 「SHINOBI」の監督、下山天という人のことはよく知らないが、この映画のドラマ部分をきちんと描けていたとは言えない。 アクションシーンやVFXシーンでいくつかツボを心得たいいカットはあった。仲間由紀恵はきれいに撮れていた。でもそれだけだ。これは愛と死と宿命と陰謀の物語なのに、そういうドラマ性は皆無だった。絵だけだった。あるいは言葉だけだった。 シナリオも、かなりよくない。アクションスペクタクルとしては、最初の5分のツカミがあまりになさすぎる。オープニングの2人の出会いのシーン、ぬるすぎる。仲間由紀恵が出てなければ即、帰ってしまいそうなほど、ぬるい。各キャラクターも魅力的じゃない。強力なキャラを作れる内容なのに、誰も印象に残らない。 結局、問題はそこだ。 MTV(PVって言い方はどうもなじまないので)ならともかく、長編劇映画は物語なんだ。いや、物語自体はたいてい語り尽くされていて、いまや重要ではない。大切なのは、語り方なのだが、でもやはり中心に物語がなくては、心を打たないんだ、と思う。物語を否定するにせよ解体するにせよ古典的に踏襲するにせよ、観客の感情を呼び起こすには、なにか物語と役者の肉体に対する真摯なアプローチが必要なんだ。 予算の問題じゃない。 もっとまじめに映画を作らなくては。 予算的には市場が狭いのは分かる。俳優たちが、テレビのタレント業でスケジュールがないのも分かる。だからって、半端な映画で満足していいということではない。 ずいぶん前のことだが、ニューヨークでアメリカ人の映画青年たちに会ったときに思ったことがある。そいつらは、日本の映画オタク同様、なんかもてなさそうなやつらだったのだが、自分のやっていることに自信を持っているように見えた。アメリカ人特有の自己アピールもあるだろうが、彼らの儲からない仕事が(彼らはインディーズのMTVなどのクルーだった)社会で認められていると感じている空気を感じた。 フランスは愛と芸術の国だ。そこでは映画はアートとして高い価値を持っている。アメリカでは、映画は産業だ。車やコンピューターと並んで重要な輸出品だ。インディーズのマイナー映画でも、息子が映画をやっているのは親にとっては、胸を張れるちゃんとした将来性のある仕事だ。 日本では?日本は、科学と経済の国だ。この国では、道路で映画の撮影の許可を取ることもままならない。芸術は、経済に比べれば大したものではないと思われている。 それは、どえらい違いである。 オープニングで「松竹110周年」とかタイトルが出たが、110年間、この会社は技術と感性の蓄積をしてこなかったんだろうか?社会にアピールしてこなかったんだろうか?いや、日本って国は表現ということにたいして110年間なにをやってきたのだろうか? 腹が立ってきた。この映画のスタッフは決して手を抜いているわけではない。それはよく分かるんだ。 私は、なんか、日本映画に対して憂鬱な気分になって有楽町マリオンを出た。
by denkihanabi
| 2005-10-28 03:27
| 映画ネタ
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