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2005年 03月 26日
「恋人までの距離(ディスタンス)」(原題「Before Sunrise」)の続編。いや、続編というよりは、9年後の後日談。
ジェシーは9年後、あの一夜の出来事を小説に書き、作家としてパリにやってきた。パリの古い書店でインタビューを受けていたジェシーは、彼の本を読んで店にやってきたセリーヌに再会する。 という、映画のような出来すぎた設定で、映画ははじまる。 相変わらずインテリの2人は、若かった頃の倍もよく喋るようになっている。2人は出会ったとたんから喋りまくりはじめる。9年間の空白をお喋りで取り戻そうとするかのように。大切な問題の外堀を言葉で埋め尽くそうとするかのように。 字幕がすごく邪魔だ。こういうとき、2人は喋り続けながら相手の顔を見ているはずだ。でも、英語の分からない私は字幕を目で追わなければならない。 意味のない会話なのに。 2人がセ−ヌ川のボートに乗ったあたりから、ようやく会話の内容が正直になってくる。約束の再会が果たせなかったあと、どんな気持ちだったか。その後の人生が、どんなものだったか。 でもね、そんな会話にも、実は意味はない。 私なら、この状況で、絶対に、飛行機に乗ったりしない。帰らない。 ジェシーも最初から、結論は出ていたはずだ。セリーヌも、書店に行くと決めた段階で、全部決まっていたはずなのだ。 だが、2人には確認作業が必要だった。9年間、何度もコンクリート詰めにしたり、溶かしたり、またコンクリート詰めにしたり、壊したりしてきた“想い”が、リアルに今でも通用するものなのか、そのことを確認するための会話の儀式が必要だったのだ。 ジェシーの愛のない結婚の話はステレオタイプすぎる。男の私でも疑ってしまう。本当なら相当ご都合主義だ。ジェシーの結婚にわずかでも愛があった方が、物語はシビアになっただろう。 セリーヌの、恋が出来ないドライな心の女になってしまったという告白の方が、痛切だ。だが抽象的でよく分からない。 お喋り、会話、言葉。 2人は一生懸命、何かを確かめようと、お互いの心のドアを引っ掻き続ける。制限時間いっぱいまで。 でも、この映画の一番いいシーンには言葉がない。 2人が、セリーヌのアパートの階段を昇るシーン。 空港に行くはずの車を待たせて、アパートの玄関に向かったところで、アタマでは整理できていなくても、カラダとココロは決まっている。 階段を昇る間、2人は言葉を発することができない。 9年前の、レコ−ド屋の試聴室の中のように。 ジュリー・デルピーは、9年間でずいぶん女優らしくなった。フランスの女優は理屈っぽい。セリーヌと女優自身が重なる。 イーサン・ホークは、痩せて顔が老けたが、映画の中のセリフにあるように、少年のような目をしたままだ。よく、男は子供のままだと言われるが、本当なのかもしれない。 面白い。 俳優ってすごいな、と思う。この2本の映画は、もちろん監督、脚本の力もあるが、なにより2人の俳優の存在なしにはありえない。この2人が、ここまで説得力のある自然さを持っていなかったら、酷い映画になってしまっていただろう。 「デボラ・ウィンガーを探して」というロザンナ・アークェットが女優たちにインタビューを繰り返すドキュメンタリーがあったが、あれより「ビフォア・サンライズ/サンセット」の2人の方が自然に見えるくらいだ。 でも、演技なんだよ。 ラスト。 部屋に入っちまったら、もう出るわけにはいかない。 この映画の場合、オスが攻め込まなくても、メスが引っ掛けなくても、そういうことになっていたのだ。 音楽が、最後にインテリの理性をチャラにする。 映画のような展開。 ”Baby, you miss the plane.” ”I know.” 言葉の服を脱いでいく85分。 待たされっぱなしの運転手が可哀想だ。 でも、まあ、パリだからしょうがないな。 9年後、またこの後日談を作ってもらいたい。 情熱を失った夫婦になっている2人の数時間を描いた映画を。 つまらなくても、見るよ。 恋愛の、一番おいしい瞬間だけを、一生繰り替えし味わうことができたら楽しいだろう。 でも、それは不可能だ。 瞬間は繰り返されれば瞬間ではなくなる。 それは恋愛ではなくなる。 変化は、苦い。 大人になると苦いものが好きになるのは、それを味わうためかもね。
by denkihanabi
| 2005-03-26 03:21
| 映画ネタ
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