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2005年 03月 23日
ラストの5分が素晴らしい。
それまでもいいのだが、このクライマックスのために全てがあったのかと思える、ここまで見てきてよかったと思える、素晴らしい5分間だ。 脚本のチャーリー・カウフマンのアイディアは「マルコヴィッチの穴」の時も思ったのだが、「ドラえもん」みたいだ。カウフマンの四次元シナリオから出てくるアイテムは「マルコヴィッチ」では“アタマのドア”、「エターナル・サンシャイン」では“記憶消しゴム”だ。 多分この人は、藤子不二雄のファンなんじゃないか? 監督は、掛け値なしの天才、ミシェル・ゴンドリー。私は、ケミカル・ブラザーズの「Let Forever Be」のビデオを見て以来、この人を自分と同じ地球に生息する人間という種族の一人だと、思っていない。もしこの人が人間なら、多分私は人間以下の生き物だ。それはイヤなので、ミシェル・ゴンドリーは、天才という別の生き物なんだということにしておきたい。 さすがのミシェル君も、映画は勝手が違ったのか、あるいは思い入れが強かったのか、前作「ヒューマン・ネイチュア」では非常に遠慮がちな演出で、正直パッとしなかったが、今回は見事、映画をモノにしている。 崩れゆく消えゆく記憶を、映像化する数々のテクニックを、使いまくりながらもひけらかさず、しっかり物語に沈めてくる姿勢は、見事。シャイで自意識が高い技巧派のアーティストらしい。 物語に対する、リスペクトを感じる。 ケイト・ウィンスレット。「タイタニック」の彼女だ。この人はどう見ても、太りやすい。でもこの作品では、そのことがOKだ。 今までで、一番よかった。 衝動的で、自己中に見えて、でもココロを触れ合わせる相手を必要としてる、ちょっとエキセントリックでどこかだらしなくてでも魅力的な女。 この女優の演技がうまいと思ったのは、申し訳ないが、これが初めてだ。 音楽も素晴らしい。エンドロールのベックの曲を聴いて、私は映画館を出てHMVに直行し、サントラとベックの新譜を買ってしまった。 さあ、みなさん、「エターナル・サンシャイン」を見に行きましょう。 では、書くよ。 複数の人間が一緒に過ごそうとしたとき、必ず“ハラに溜まったモノ”が生じる。小さい社会の中であっても、人間は自分とは違う個体を受け入れるとき、なんらかのガマンをしなくてはならないからだ。精神的にも肉体的にも距離が近く、共に過ごす時間の長い、男と女ならなおさらだ。 その“溜まったモノ”たちはやがて、2人の関係をギクシャクさせはじめる。言葉が、前のようには通じない。いや、通じていたと思っていたのは、俺の、私の、勘違いだったんだ。心まで通じていると感じていたのに。 気がついてももう遅い。何が遅いのか?自分を分かってくれると思った相手が、結局他者だったと自分が気がつくのが遅かったのか? 違う。 他者に依存してしまっている自分に気がつくのが遅かったのだ。 依存してしまっている。 別れられない。 でも、今や、心は通じていない。 と、感じている。 じゃ、どうする。 酒を飲んであばれる?それもアリだ。でも前向きな解決法とは言えない。お互い荒むだけだ。浮気する?ガス抜きにはなる。でも、当然それは根本的な解決にはならない。所詮、浮ついた空気みたいな精神遊びだ。“ハラに溜まった”重い実在感のある問題は、常に存在し増殖する。 心の癌のように。 あああ、じゃあ、別れよう、ムカつく、こんなことで悩んでる自分にムカつく! 別れよう。すっきりしよう! だが、私はあなたに依存している。 この映画の大部分を占める、ジョエルの消されゆく記憶のシーンに登場するクレメンタインは、クレメンタイン本人ではなく、ジョエルがイメージし、依存している女性なのだ。 それは、クレメンタインの心の中のジョエルについても、同じだったはずだ。 100パーセント、あなたを忘れられればいいのに。 それが、この映画に描かれていないこの物語の入口。 映画は、出口の少し前から始まり、その後、入口の少し先を描く。 だが、たどり着く出口は、入口で期待したものとは違う。それが、素晴らしい。 メアリーはワキ役のようで、見事な仕事をする。 彼女が車に載せて持って帰ったカセットテープ。あれは、愛の呪いが込められたテープ、だ。 記憶を消しさり、再会し、しかしやはりまた、惹かれ合ってしまったジョエルとクレメンタインが、本人達は初めてと思いながら、実は二度目の恋に墜ちようとするとき、メアリーから送られてきたテープが2人に届く。 ここが最高! テープには、別れよう忘れようと決意した2人の、もっともネガティブなエネルギーが叩き付けられている。 依存を切り捨てるための、怒りと恨みと憎しみのコトバが。 新しく始めようと、幸せの序曲を聴くつもりでいる2人の耳に届くのは、かつての自分達自身の破壊と崩壊の音だ。 素晴らしい。 こんなことが、映画以外にできるだろうか? ハラに溜まっていたモノ、そのすべてを2人は吐き出して、結局、テープを通して相手に叩き付けた. そして、汚れのない心で浴びた。 こんなメンドくさい仕掛けはなしで、最初からホンネをぶつけときゃいいのに。 でもね、それはしてもうまくいかないし、できないことなのだ。 それには、大人のドラえもんが、必要なのだ。 ラストの5分間は本当に素晴らしい。 笑えて、泣ける。 サントラに入っていた、劇中では流れないE.L.Oの「Mr.Blue Sky」がなぜかすごくいい。 まだまだ、いろんな角度から語れそうな映画だ。
by denkihanabi
| 2005-03-23 01:11
| 映画ネタ
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